また上代・下代以外にも、参考価格やオープン価格、掛け率など、さまざまな専門用語があります。
ネットショップ開始前に覚えておきたい専門用語を解説するとともに、商品の仕入れ方法も紹介します。ネットショップを始めようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
商品を仕入れる際に使われる専門用語を解説
上代(じょうだい)
- ●定価:国やメーカーによって決められている販売価格。小売業者の一存で価格変更(値上げ・値下げなど)は基本的に不可能です。
- ●メーカー希望小売価格:メーカーが設定した希望販売価格。あくまで小売業者に対する希望として設定されている価格なので、定価のような拘束力はありません。
- ●参考上代:メーカー希望小売価格と同様。単に上代と言われることもあります。
- ●オープン価格:小売業者が自由に決められる販売価格。メーカーは小売業者に卸す値段だけ設定しています。主に家電製品に使われます。
同じ価格を表す言葉でも微妙な違いがあるため、仕入れの際は定価なのか、メーカー希望小売価格(参考上代)なのか、オープン価格なのか明確にしておかなくてはなりません。なぜなら定価の場合は値段を変更できませんが、メーカー希望小売価格やオープン価格なら、小売業者の一存で値段を設定できるため価格競争が可能だからです。
例えばファッションアイテムをセール価格で販売したり、仕入れた商品を他店より安く販売したりなどが挙げられます。また上代は基本的に消費税を含みませんが、場合によっては消費税込みの可能性もあるので、忘れず確認が必要です。
上代とは、商品を消費者へ販売する際の価格だと覚えておきましょう。
下代(げだい)
下代はいくらで商品を仕入れたかを表すものなので、下代が低く上代が高いほど、利益は大きくなります。メーカーや卸業者から購入した金額に対し、いくら上乗せして販売するかがネットショップを行う上で重要な仕事です。
この下代は基本的に「上代×掛け率」で計算します。例えば2万円の商品を仕入れる際の掛け率が50%だった場合、下代は1万円となります。掛け率に関して詳しくは後述しますが、下代は仕入れ価格を表すと覚えておきましょう。
掛け率(かけりつ)
また上代と違い、商品ごとに一律ではないのも特徴。取引先の実績や関係性、仕入れる量などによって変動します。
掛け率が異なれば、下代が同じでも最終的な利益に差が生じます。例えば同じ2万円の商品を仕入れる際であっても、掛け率が50%なら下代は1万円ですが、掛け率が40%なら8,000円で仕入れ可能です。
掛け率は条件や状況しだいで変動しますが、なるべく低い方が利益を出しやすくなっています。
発注単位
例えば「1ダースから」「20万円以上から」など、個数や金額などで発注単位が指定されます。
上代の表記方法が複数に分かれている理由は?
かつては「定価」での表記が主流でした。しかし定価はメーカーや卸業者が、小売業者の販売価格を拘束する行為でもあります。例えば「安売りするなら卸さない」「指定した価格で販売させる」など価格を固定する行為につながりかねず、これらは価格競争を妨げるため独占禁止法に触れます。
そのため最近では書籍・雑誌・新聞・音楽などの著作物など、一部例外を除いて定価は使用されていません。
こうした背景から「メーカー希望小売価格」といった表記が登場しました。そして過剰な値引き合戦により希望小売価格が無意味になってきたため、オープン価格が登場。モデルチェンジによる型落ちなどで値崩れしやすい家電製品などでは、オープン価格表記が主流になっています。
公正取引委員会「知ってなっとく独占禁止法」2021年
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/dokkinpamph.pdf
(参照:2022-2-21)
ネットショップの商品を仕入れる5つの方法
オンライン仕入れサービスを利用する
サイトに会員登録するだけで利用できるので、手軽に始めやすいのが特徴。自宅にいながらパソコンやスマートフォンから、ネットショップで販売する商品を探せます。
例えば「NETSEA」や「スーパーデリバリー」などのサービスがあります。1つの仕入れサイトに登録するだけで、さまざまなメーカーの商品を仕入れられるので、商品数を大幅に増やせるのがメリットです。
また商品を1点から仕入れられるので、在庫を抱えるリスクを最小限に抑えられます。
ただし「商品の実物を確認できない」「誰でも仕入れられるため差別化しにくい」というデメリットがあります。特に後者は価格競争に陥りやすいという点で、大きなデメリットです。ネットショップのコンセプトを練ったり、オンライン仕入れサービス以外からも商品を仕入れたりと、差別化する工夫が必要です。
また海外サイトを使用すれば、競合と被らない独自の商品を仕入れやすくなります。ただし日本語が使えず不便な点もあります。オンラインで仕入れられるのは便利ですが、他店と差別化する工夫が必要です。
NETSEA「NETSEA」
https://www.netsea.jp/
(参照:2022-2-21)
スーパーデリバリー「スーパーデリバリー」
https://www.superdelivery.com/
(参照:2022-2-21)
卸業者・問屋から仕入れる
卸業者・問屋を介せば、国内はもちろん海外の商品も取り扱いやすくなります。多くの商品を扱える上に、他のお店にはない商品を仕入れられる可能性もあります。
日本各地に問屋が集まる「問屋街」があるので、専門用語やルールなどを下調べしてから交渉に臨みましょう。
メーカーから直接仕入れる
メーカーにメールや電話で連絡を取り、卸価格で購入できるか確認し契約を交わします。卸業者や問屋を通さずに直接取引するため、仲介コストがかからず安く仕入れられるのがメリットです。ただしショップ実績がないと断られやすく、発注単位が大きい傾向があるためまとまった資金が必要になる場合もあります。気になる商品があれば、メーカーに問い合わせてみましょう。
また展示会や見本市のようなイベントで、対面で担当者とやり取りする方法もあります。例えば日本最大級の総合展示会「東京インターナショナル・ギフト・ショー」や世界中からトレンドファッションアイテムが集まる「ファッション雑貨EXPO」など、各地でさまざまなイベントが行われています。
イベントに参加すると新商品をいち早くチェックできたり、一度に多くの商品を知れたりするのが大きなメリットです。メーカー・同業者とのパイプを作るチャンスでもあります。
ただし個人のネットショップは信頼を得にくいので、名刺やショップの案内を用意して本気度・魅力を伝えるようにしましょう。ある程度運営期間が長く、販売実績があるショップに向いている方法です。
東京インターナショナル・ギフト・ショー「東京インターナショナル・ギフト・ショー」
https://www.giftshow.co.jp/tigs/94tigs/
参照:2022-2-21)
ファッション雑貨EXPO「ファッション雑貨EXPO」
https://www.lifestyle-expo.jp/ja-jp/about/fa.html
(参照:2022-2-21)
クリエイターを見つける
ハンドメイドサイトなどに個人で出品しているクリエイターに連絡して、仕入交渉をすればショップコンセプトに合うオリジナリティ溢れる商品を販売できます。個人クリエイターの場合は、メーカーよりも柔軟に対応してもらえるかもしれません。メールで問い合わせてみましょう。
ドロップシッピングを利用する
通常の仕入れとは異なり、在庫を抱えないのが大きな特徴。ネットショップに商品を掲載して、購入されたらメーカーや提携業者から、消費者へ直接商品が送られます。ネットショップ側が在庫を持たなくて済むため、不良在庫を抱えるリスクや在庫管理の手間を省けるのがメリットです。
また発送の必要もないので梱包や集荷依頼、ラベル作成、発送手続きといった作業も必要ありません。在庫や発送作業にスペースを割かなくて済みます。
ただし仕入価格が固定されているため、価格競争になると利益が出にくくなるのがデメリットです。サービスの質を高めたり、商品の選定に力を入れたりと、価格以外の面での差別化が必要になります。SNSやブログ、動画で宣伝するなど、集客方法を工夫するのも手です。
ドロップシッピングは「DSP(ドロップシッピング・サービス・プロバイダ)」や「ドロップシッピングサイト」を利用することで始められます。販売方法に工夫がいるものの、在庫を抱えずに済むためリスクを最小限に抑えたい方におすすめです。
専門用語と仕入れ方法を覚えてネットショップを開こう
一度に覚えようと思うと混乱するかもしれませんが、どれも難しい言葉ではありません。ネットショップ開業前に一つ一つ覚えて、メーカーや卸業者、同業者とスムーズにコミュニケーションできるようにしておきましょう。
また紹介したネットショップの代表的な仕入れ方法を参考に、すてきな商品を仕入れてみてください。専門用語を覚えていれば、自信を持って商談に臨めるでしょう。
商品を売るためにコストや利益を無視した価格設定をすると、会社経営に深刻なダメージを与える可能性があります。そのため、価格は商品の営業・販売構造などを総合的に判断し、最適な方法で設定することが重要です。
この記事では、損をしないための最適な販売価格の決め方を解説します。また、販売価格を決める上で注意すべきことやテクニックなども紹介するので、最後までご覧ください。
販売価格の決め方と計算式
販売価格は、基本的に原価と利益率の2つから決めることができます。以下の計算式に当てはめれば簡単に決められるので、販売価格を設定するときの目安として取り入れてみてください。
原価から決める計算式
原価から販売価格を決める計算式は「原価(仕入れ値)÷原価率」となります。計算上は赤字にならないことから、原価を基準にして販売価格を決めるのが一般的です。
原価から販売価格を決める場合は、営業ジャンルに合わせた原価率を知ることからスタートしましょう。原価率は売り上げに対して原価の占める割合のことで、ジャンルによって基準が異なります。
例えば、飲食店は約30%・美容業は約10~70%・製造業は約80%といわれており「原価÷売上」の計算によって算出します。飲食店を例に挙げると、原価が300円の場合は「300÷0.3」の計算となり、販売価格は1,000円です。このように、原価から決める場合は原価率が重要となるため、事前に把握しておきましょう。
利益率から決める計算式
利益率から決める場合は「原価÷(1-予定利益率)」の計算式となります。あらかじめ得たい利益率を考えておき、利益に合わせて価格を決めていくのが特徴です。
利益率を50%と仮定し、原価が500円だった場合の計算式は「500÷(1-0.5)」で、販売価格は1,000円です。計算式は原価から決める方法と異なりますが、どちらを使っても問題はありません。
原価の要素を分解してみると
- ●製造直接費
- ●製造間接費
それぞれどのようなものなのかを以下で解説するので、参考にしてみてください。
製造直接費
- ●家具製造の際に使うプラスチックや木材
- ●直接的な業務を行う従業者に支払う給与
- ●外注で加工してもらう際に必要な外注加工費
製造直接費は直接製品に関わっているコストで、製品を製造するほど発生するものです。製造直接費の種類は幅広くて管理が難しいといわれていますが、原価を抑えることで原価率アップにつながるため重要なポイントです。
製造間接費
- ●塗料・潤滑油など、数で明確にできない材料
- ●製品に直接関わっていない従業者に支払う給与
- ●工場設備の減価償却費や修繕費
製造間接費は製造直接費用よりも把握や可視化がしづらく、原価計算が複雑になる傾向があります。経費の流れや現場の稼働状況を確認し、一定の基準を設けて原価の内訳を把握することが大切です。
総原価とは
上記の費用は「製造・販売するための費用」であり、総原価と呼ばれています。なお、単純に原価といった場合は製造原価を意味し、原価に含まれない以下のものは非原価項目です。
- ●営業活動に関係していないもの
- ●異常事態などで発生した損失
- ●税金
基本的に、製品やサービスに対する材料費・営業費・人件費などは、すべて集計することを頭に入れておきましょう。
販売価格の決め方で注意すべき点
販売価格を決める際には、以下3つのことに注意しましょう。
- ●市場価格とかけ離れていないか確認する
- ●顧客目線で考えることを意識する
- ●最初から販売価格を安くしない
価格は商品の販売後に変更することが難しくなるため、上記の注意点を押さえて慎重に決めてください。
市場価格とかけ離れていないか確認する
販売価格を決めるときは、市場価格とかけ離れていないかをリサーチしましょう。市場価格とかけ離れた価格設定を行うと、顧客が競合企業・商品へ流れてしまう可能性が上がるからです。特に類似商品の場合、顧客は少しでも安い方を選びやすいです。
- ●競合商品にはない価値がある
- ●ブランド力がある
上記のような強みがあれば問題ありませんが、そうでない場合は市場価格や競合商品の価格を参考にし、最適な価格設定をしましょう。
顧客目線で考えることを意識する
販売価格の決定は、顧客目線になって消費者が払いたい金額かどうかを考えることが重要です。たとえ素晴らしい商品でも、見合った価格で販売して顧客に魅力的と思ってもらわなければ、売上を上げられません。消費者にとってのメリットを伝えるなど、魅力的なPRができているかを確認した上で販売価格を決めましょう。
最初から販売価格を安くしない
店舗や企業の印象が悪くなる可能性もあるため、原材料の高騰などの事態が発生するリスクも考慮して、価格を決めてください。価格を無理に抑えずに最初から高めに設定しておくと、環境変化に対応しやすくなるためおすすめです。加えて、高い価格から状況に応じて値下げをすれば、顧客からの評価アップも期待できるでしょう。
価格の決め方の種類
販売価格の決め方には、さまざまな種類があります。決め方の種類を知っておけば、原価から逆算して決めるよりも適正な価格設定ができるようになります。ここでは、数ある中から4つを紹介するので、業種に合わせて最適な方法を選んでみてください。
マークアップ法
1つの商品の仕入額が1,000円だった場合は、20%の利益額を付加して1,200円で設定します。一般的にマークアップ法は、売り手の企業側にコストダウンが意識されにくいという問題があります。そのため、基本的に「需要に対して供給が不足する売り手市場」「市場での競争が激しくない」という場合に限って有効な方式です。
コストプラス法
売れれば利益は出ますが需要・競合の要素を勘案しないため、売り手の交渉力が強い独占市場などで使われることが多いです。製造業の場合は、直接費と間接費に一定の利益を加えたものを販売価格とします。
1つの商品の単価が10,000円であれば、2,000円の利益を付加して12,000円で設定します。コストプラス法は、製造原価の範囲についてさまざまな考え方があるため、業種や取扱商品の競合例を参考にすることが重要です。
市場価格追随法
- ●他社商品と比較して勝っている部分があるから価格を上げる
- ●他社商品よりも原価を抑えられているから価格を安くする
市場にある競合商品・サービスと差別化ができる場合は、価格を上げて売上アップにつなげられます。逆に差別化が難しく価格を下げる場合は、売上が期待できないといった可能性も出てくるため注意が必要です。
名声価格法
バッグやアクセサリーなどのブランド商品は、顧客側が「価格が高い=良い商品である」と認識するため、高い価格で販売することで高品質・高価値を訴えられます。名声価格法は「差別化を図りたい」「競合企業と差をつけたい」という場合に最適です。
価格の決め方のテクニック
- ●端数価格で設定する
- ●抱き合わせ価格で設定する
- ●段階価格で設定する
上記3つは、販売価格を決める上でのテクニックとなります。それぞれどのように決めていくのか、具体例を出しながら解説するので取り入れてみてください。
端数価格で設定する
ただし端数価格を活用するには、価格差分を満たすだけの売上増加が必要不可欠です。販売数量の差が満たせない場合は、別の方法を取り入れることをおすすめします。
抱き合わせ価格で設定する
他にも、在庫処分や販売の手間を削減できる点も大きなメリットとなります。ただ、消費者側は1回の購入金額が単品ごとよりも高くなるため、安いことが実感できるだけの値引きをしないと効果が期待できません。
段階価格で設定する
980円・1,980円・2,980円の商品があった場合、1,980円の商品を選択しやすいといわれています。階段価格を利用して、真ん中に利益率が高い商品を設定すると、より利益の向上が期待できるでしょう。
まとめ
そして、顧客が商品やサービスに感じている価値を参考にする市場調査も忘れてはいけません。商品はただ安く設定すればよいわけではなく、顧客が感じている価値を意識した上で決める必要があります。