ネットショップ開業に必要な開設資金について
大まかに言えば、下記の項目に対して費用を負担する必要があります。
- ・ネットショップを立ち上げるための費用
- ・ネットショップを運営するための費用
- ・ネットショップで販売する商品を準備するための費用
それぞれの項目で必要なものが異なるので、詳しく解説します。
ネットショップを立ち上げるための費用
最近では、ネットショップの開設や運営ができるパッケージ商品なども充実しており、立ち上げに掛かる負担の軽減が可能です。一方で、他にはないネットショップを立ち上げたい場合は、それなりの費用が必要になると考えましょう。一般的なネットショップの立ち上げに掛かる費用は下記のとおりです。
開設方法 | 初期費用 | 月額費用 |
ASP | 0円~5万円 | 0円~5万円 |
モール型ECサイト | 0円~数十万円 | 0円~5万円 |
オープンソース | 0円~50万円 | 0円~50万円 |
パッケージ商品 | 300万円~500万円 | 数万円~数十万円 |
フルスクラッチ | 1,000万円~ | 数万円~数十万円 |
費用を抑えたいならモール型ECやASPがおすすめ
モール型ECサイトとは、複数の店舗が入ったインターネット上のショッピングモールのことで、有名なものに楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどがあります。
例えば楽天市場の場合、3つの出店プランから選択でき、月額料金は19,500円~100,000円です。初回出展料として1年分の一括払いまたは半年分の分割払い(選択プランによって異なる)が必要になるため、234,000円~600,000円を準備する必要があります。また、初期登録費用として60,000円の支払いも必要です。
もっと費用を抑えたいのであれば、ショッピングカートASPの利用をおすすめします。
ショッピングカートASPはネットショップをクラウド上で構築できるサービスで、ショップの立ち上げができる他、運営に必要な機能やテンプレートが用意されているのが特徴です。
最近では0円でネットショップを開設できるサービスもあるため、費用コストを抑えられます。
また、月額料金も多くて数万円程度ですので、手軽にネットショップを開設できるでしょう。
ただし、モール型ECやショッピングカートASPは、デザイン性やカスタマイズ性に制約がある場合が多く、販売する商品やショップのブランディングの方向性によっては、適さない場合もあります。
オープンソースやパッケージ、フルスクラッチは相応の費用が掛かる
オープンソースまたはパッケージでは、ネットショップの構築に必要な機能がすべて装備されているため、ゼロからプラグらミングをする必要はありません。
また、モール型ECサイトやショッピングカートASPと比較して、サイト構築の自由度も高いため、自由にカスタマイズしたネットショップを作り上げることができます。
オープンソースでは比較的費用を抑えられやすいですが、自社でカスタマイズしたり、サイトの保守管理が必要になったりするため、Webに関する相応の知識がなければ運用するのは難しいでしょう。
また、パッケージを利用する場合は数百万円程度の資金が必要になる他、ランニングコストも必要になるため、費用面での負担は大きくなります。
一方で、カスタマイズやサポートについては、パッケージの販売会社のサポートを受けられるため、Webの知識が乏しい場合でも、ネットショップの立ち上げ・運営を行えるでしょう。
フルスクラッチとは、何もない状態からネットショップを立ち上げる手法です。大手のアパレルブランドや家電量販店などのECサイトは、フルスクラッチで作られたECサイトが多いです。
フルスクラッチでは、機能やデザインなどは自由に選択できますが、その分の費用が掛かります。1,000万円以上は必要になるため、開設資金に相当余裕がないと利用するのは難しいでしょう。
また、機能に合わせたランニングコストやセキュリティ対策も必要になるため、コスト面での負担はかなり大きくなります。
ネットショップの立ち上げに必要なその他の費用
- ・ネットショップのドメインの取得費用
- ・営業許可申請費用(取扱商品による)
- ・ショップロゴなどのデザイン費用
独自にネットショップをインターネット上に開設する場合は、ドメインの取得費用が必要です。
ドメインとは、インターネット上の住所を表すもので、ネットショップがどこにあるのかを判別するための情報として利用されます。
ドメイン費用はドメイン名やサービスによって異なりますが.comや.netといった一般的なドメインであれば年間1,000円程度で利用できます。
また、ネットショップで中古品やリサイクル品を販売する場合は、古物商許可申請が必要です。
ネットショップを運営する主たる営業所が管轄されている警察署に申請をしなければならず、申請手数料として19,000円、住民票や身分証明書の費用として1,400円程度を用意する必要があります。
他にも、食品を販売する場合は食品衛生法に基づく営業許可が必要になり、都道府県や市町村によって異なりますが、2万円程度の費用が必要です。
例えば東京都新宿区で食肉や魚介類の販売を行う場合、新規申請で11,500円、継続申請で5,700円の申請手数料が必要です。
また、菓子類を製造して販売する場合の申請手数料は、新規申請で16,800円、継続申請で8,400円となります。
さらに、ネットショップの屋号に必要なロゴなどをデザインする費用も掛かります。
自分でデザインする場合は費用が掛かりませんが、デザイナーに依頼した場合は数万円~数十万円程度の費用が発生するでしょう。
新宿区ホームページ.「営業許可業種と申請手数料一覧」
https://www.city.shinjuku.lg.jp/jigyo/file03_04_00002.html
(参照2022-03-29)
警視庁ホームページ「古物商許可申請」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/tetsuzuki/kyoka.html
(参照2022-03-29)
ネットショップを運営するために必要な費用
準備に費用が必要なものの一例は下記のとおりです。
- ・パソコン
- ・プリンター
- ・インターネットの契約
- ・通信費
- ・商品を撮影するためのカメラ
- ・撮影機材
- ・画像編集ソフト
- ・会計ソフト
- ・セキュリティソフト
- ・商品の梱包資材
- ・固定電話
- ・スマートフォン
パソコン
ネットショップでの受発注やメール対応の他、商品の仕入れ先とのやり取りにも使用します。
スペックはそれほど高いものでなくても運用は可能ですが、サクサクと動いてくれるパソコンを導入しないと、ストレスや作業効率の低下につながるため、注意が必要です。
予算としては10万円程度を考えておきましょう。
また、作業効率を考えるのであれば、大きなモニターをセットで購入することをおすすめします。
プリンター
納品書や領収書の作成、商品の配送先のラベル作成などに使用します。また、ネットショップの在庫やデータをプリントアウトするケースもあります。
プリンターにはインクジェットものとレーザーの2種類がありますが、印刷スピードを重視したい場合や、大量の印刷が必要な場合はレーザープリンターを選択するのがおすすめです。
安いものなら1万円程度から探すことができるでしょう。
また、プリンターの消耗品としてトナーが必要になります。メーカーや機種によって異なりますが、モノクロ印刷1枚をプリントするのに3円程度のコストが掛かるので覚えておきましょう。
インターネットの契約
パソコンでインターネット通信を行う場合、光回線やポケットWi-Fi、スマートフォンでのテザリングなどを利用できますが、ネットショップ運営には光回線がおすすめです。
光回線ではデータ使用量による通信制限がないこと(大量にアップロードした場合を除く)に加え、回線をケーブルで引き込めるので通信が安定するからです。
光回線にはNTT系列が提供するもの、電力会社が提供するものなどの種類があるため、目的に応じたサービスを選択するようにしましょう。
通信費
選択するプロバイダやサービスによって異なりますが、月額4,000円~5,000円程度の費用を見ておきましょう。また、法人契約できるサービスを選択すれば、通信費を経費計上することも可能ですので、合わせて検討するようにしましょう。
商品を撮影するためのカメラ
スマートフォンでも撮影可能ですが、写真の出来栄えにこだわるのであれば一眼レフの購入も検討するべきでしょう。5万円程度から探すことができます。
また、動画を用いた商品説明やライブコマースを行う場合は、ビデオカメラの購入も検討しなければなりません。こちらも5万円~10万円程度で探すことができます。
もし、撮影に自信がない場合は、プロのカメラマンや動画編集者に撮影を委託するのも1つの手段です。なお、委託する頻度や商品数などによって費用は異なります。
いずれの場合も、予算を考慮した上で最適な方法を模索するのが大切です。
撮影機材
照明器具や撮影ボックスなど揃えることで、商品をより魅力的に見せる写真や動画を撮影できます。
画像編集ソフト
商品紹介のための写真を編集したり、バナーを作成したりする際に使用します。
adobe社が提供しているPhotoshopやIllustratorなどのソフトは、月額数千円から利用可能です。
できるだけコストを抑えたいのであれば、Windowsパソコンに標準装備されているペイントソフトやMacのプレビューを利用したり、無料で使える画像編集ソフトを探したりするのもいいでしょう。
ただし、商品の写真やバナーは売上を上げるためのデザインやノウハウなどを学ぶ必要があります。
自信がない場合はプロの編集者に委託することも考えましょう。
会計ソフト
ネットショップ運営では決算書の作成や確定申告が必要になるためです。
帳簿を作成したり、Excelなどの表計算ソフトを利用したりすることもできますが、手間や負担を軽減したいのであれば、会計ソフトを使用するのがおすすめです。
会計ソフトの導入は、ソフトそのものを購入してパソコンにインストールする方法と、月額料金を支払って、クラウドサービスを利用する方法があります。
購入する場合は数万円程度、クラウドサービスでは月額数千円程度で利用可能です。
セキュリティソフト
ショップ運営では顧客に関する個人情報やクレジットカード情報など、漏洩や不正アクセスが許されない重要な情報を取り扱うためです。
他にもシステムや個々のサービスに対するアクセス制御・監視要件の指定などでセキュリティの強化が必要になる場合もあります。
不正アクセスを検知できるサービスや、不正注文を防ぐサービスの導入を検討するなど、ある程度の予算を確保した上で対応するようにしましょう。
商品の梱包資材
梱包資材にはさまざまな種類があり、商品の大きさや素材に合ったものを選択することが重要です。
資材の一つひとつは少額ですが、まとめて準備するためには数千円から数万円程度の予算を見ておきましょう。
また、選択する資材や大きさによっては送料に違いが出るため、慎重に検討しましょう。
固定電話
ネットショップでは特定商取引法に基づき、サイトに運営者の電話番号を記載する必要があります。
その際、携帯電話の番号よりも固定電話の番号の方が、ユーザーから信頼してもらいやすくなります。
月額3,000円程度で利用可能です。
スマートフォン
運営スタッフ同士や仕入れ先との連絡用、またはネットショップのスマートフォンで表示した際の確認用として使用します。
頻繁に電話をするならかけ放題プランがおすすめです。利用頻度に合わせて適切なプランを選びましょう。
その他に必要になることがある費用
- ・家賃(オフィス・倉庫)
- ・人件費
- ・宣伝広告費
ある程度の規模のネットショップを運営する場合は、オフィスや倉庫を借りる必要があります。
新規でテナントを借りる場合は、面積や交通の便などによって数十万円~数百万円の資金を用意しなければなりません。また、法人化してスタッフを雇う場合は、人件費も必要になります。正社員を雇用する場合は給料コストに加えて、社会保険などの費用も負担する必要があります。
さらに、自作のサイトでショップ運営を行う場合は、インターネット広告などを使って集客を行うため、宣伝広告費も必要です。1クリック当たりの単価が数百円から千円程度になることもあるので、総合的に考えてある程度まとまった予算を組む必要があるでしょう。ネットショップの事情によっては、これらの費用が追加で発生することを理解しておきましょう。
商品準備に必要な費用
商品の準備資金として下記の2種類があります。
- ・仕入れ資金
- ・商品の製造資金
商品を仕入れて販売する場合は、卸売業者や製造元から商品を仕入れるための資金を準備する必要があります。
仕入れる商品ジャンルの価格帯や取扱商品数、想定している在庫数などによって、準備するべき資金は変動するでしょう。また、卸売サイトなどを利用すれば、低価格で商品を仕入れることができますが、他社との差別化が図りにくくなるため要注意です。なお、ドロップシッピングを利用すれば、仕入れの必要がなくなるため、コストを削減できます。商品はメーカーや卸売業者から直接購入者に発送されるため、梱包・発送の手間も省くことが可能です。
仕入れではなく自社で製造した商品を販売する場合は、製造資金が必要になります。商品を製造する場合は、簡易的に製造するものと、本格的に製造するものに分けられます。ある程度パターン化された商品を受注販売するならば、簡易的な製造で対応可能ですし、予算を抑えられるでしょう。
一方、オリジナリティの高い商品を製造販売するのであれば、初期投資を行って本格的に商品を製造することを検討した方がいいかもしれません。ネットショップのコンセプトや方向性、取り扱う商品の価格帯などを考慮して、製造資金をあらかじめ確保するようにしましょう。
まとめ
また、運営費用としては設備・資材・備品の購入費用に加え、通信費や固定電話・スマートフォンなどのランニングコストが掛かることも視野に入れておく必要があるでしょう。
販売する商品を準備する費用は、どのような商品を扱うのか、商品を仕入れるのか、製造するのかによって必要な予算は変動します。いずれの場合も事前に十分に検討し、予算を確保しておくことが重要です。本記事を参考に、ネットショップの開業に必要な資金について理解を深めておきましょう。