様々な決済手段やECサイト構築サービスの登場により、多言語・複数の通貨への対応が以前よりも容易になりました。しかし、越境ECは安易に始めてしまうと「商標問題」「為替リスク」「高額な配送料」などで、思わぬトラブルを招いてしまうこともあります。
トラブルを予防するためにも、越境ECを運営するうえで抑えておくべきポイントについて紹介します。
Contents
越境ECとは?
「越境EC」と「クロスボーダーEC」の違いは、対応する国の数です。越境ECは1つの国・知識に対して展開するECのことで、クロスボーダーECは複数の国・地域に対して展開するECサイトのことを指します。越境ECを発展させるとクロスボーダーECになるため、初めて海外への進出を考えている方は越境ECから挑戦してみるのが良いでしょう。
越境ECが注目されている理由
コストが安く済む
販路の拡大
スマホの普及
越境ECのメリット・デメリット
越境ECのメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
メリット | デメリット |
・販路を拡大できる ・費用を抑えて海外へ出店できる ・競合サイトが少なくなる |
・多言語への対応が必要になる ・国・地域により決済方法に違いがある ・配送料や関税がかかる ・為替変動リスクがある ・関税や各国の法律に関する知識が必要になる |
上記のように複数のデメリットがあるため、越境ECへ参入するハードルが高いと感じるかもしれません。
しかし、越境ECには販路拡大などで売上を伸ばせる魅力もあります。適切な対策を施すことで、メリットがデメリットを上回るでしょう。
越境ECの市場規模
経済産業省が2020年に発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、アメリカに対して国内の越境ECの市場規模は9,034億円で前年比9.7%増、中国においては1兆6,558億円で前年比7.9%増でした。
参考:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
国内のBtoCのEC市場規模は19兆3,609億円であることから、2つの主要国を合わせると国内の市場規模の10%以上にもなります。2023年には世界のEC市場規模が6兆USドルを超えると予測されているように、EC市場規模は国内・海外において右肩上がりに増えるでしょう。
また、経済産業省の同報告書では、各国に対する越境ECの市場規模も紹介しています。2019年の各国に対する越境ECの市場規模は以下の通りです。
国 | BtoC EC市場規模 単位:億USドル |
中国 | 19,348 |
アメリカ | 5,869 |
イギリス | 1,419 |
ドイツ | 819 |
フランス | 694 |
ロシア | 269 |
インドネシア | 210 |
タイ | 50 |
ベトナム | 50 |
UAE | 2 |
国内の越境ECで大きな市場を占めているのは中国・アメリカであることがわかります。進出先を決める際の判断材料にしてください。
越境ECを始めるために確認しておくべきこと
また、越境ECでは配送料や関税によるコストが発生します。そのため、国内でお得な商品であっても、海外で販売する際にはお得ではないこともあります。販売価格は売れ行きに重要な影響を及ぼすため、配送料や関税にかかるコストは算出しておきましょう。
どのような商品を取り扱えば良いか悩む場合は、「現地で人気のある日本の商品」「現地で入手が難しい商品」をポイントに選定するのがおすすめです。越境ECの強みを生かしやすくなるでしょう。
越境ECを始めるには、「法律や規則」「出店方法」も確認するべきポイントです。以下よりそれぞれについて詳しく解説します。
法律や規制
中国を対象にした越境ECを運営する際には、同国の法律である「中華人民共和国電子商務法」を遵守する必要があります。また、中国でECサイトを運営するためには、「ICPライセンス」が必要です。さらには、「中国サイバーセキュリティ法」などネットに関連する法律も存在します。これらの法律や規則に違反すると、運営停止の処分や罰金が科せられるでしょう。
中国以外も同様で、国・地域によって法律や規則が異なります。日本と同じと考えないようにしてください。
商品によっては、販売どころか輸出入が禁止されている場合もあります。例えば、中国では古着の輸入が禁止されているといった具合です。各国の税関では、ホームページに輸出入の許可リストを公開しています。越境ECを運営する前に、商品の輸出入・販売が禁止されていないかも必ず確認してください。
出店方法
自社ECサイトを構築する
越境ECに対応している国内モールに出店する
海外モールに出店する
越境ECを成功させるポイント
現地のニーズを把握する
現地で受け入れられる決済方法を導入する
プロモーションの戦略を練る
越境ECを行う際の注意点と解決策
越境ECを運営するには、以下の4つの点に注意してください。
- ・関税などの取引規制
- ・言語の違い
- ・決済方法・為替変動
- ・商標に関するトラブル
これらの注意点では、コストが増えるケースや、訴訟にまで発展するトラブルもあります。事前にしっかりとした対策を施しておくことが、トラブルを避けるためには重要です。
そこで、4つの注意点についての詳細と解決策について紹介します。越境ECをスムーズに運営するためにも、参考にしてみてください。
関税などの取引規制
また、通関時には中身をチェックするために梱包を開けることもありますので、開封された状態で返品されてしまう可能性もあります。
関税などの取引規制に対する解決策
参考:財務省関税局「輸出統計品目表」
https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/index.htm
HSコードに対応した通関方法を1つずつ覚えることで、取扱商品を輸出できるようになります。また、国内の手続き方法だけではなく、輸出先の条例や法律などを定期的にチェックすることも忘れずにしましょう。
言語の違い
そこで、日本語しか理解できなくても、Google翻訳機能で現地の言葉に翻訳することが可能です。しかし、自動翻訳機能では翻訳ミスや意味不明な文章になることが問題になります。
言語の違いの解決策
決済方法・為替変動
中国で越境ECをするのであれば、アリペイなどの決済方法が有効です。キャッシュレス決済が盛んに行われる一方で、代金引換も人気があります。一方で、アメリカであればペイパルが人気の決済方法です。クレジットカード以外にも、このような現地で人気の決済方法を導入することで、かご落ちを防止できるでしょう。
決済時に問題となるのは為替変動リスクです。外国通貨で販売すると為替変動により大きく儲かったり、まったく儲からなくなったりとリスクが伴うためです。
決済方法・為替変動の解決策
商標に関するトラブル
例えば、中国では日本の地名である「今治」が商標登録されたことで問題となりました。また、国内のブランド名である「無印良品」も中国では他社により商標登録されている状況です。つまり、自社のブランド名であっても商標を取られてしまうこともあるのです。
このように、海外では商標登録によるトラブルが後を絶ちません。越境ECを運営する際には、他社の商標を使わないことも大切ですが、自社のブランドを守ることも必要になります。
商標に関する解決策
まとめ
国によって法律や規則が異なるため、関係法規に抵触しないように注意しなければなりません。とくに越境ECで注意が必要なのは、「関税などの取引規制」「言語の違い」「決済方法・為替変動」「商標に関するトラブル」です。
越境ECはデメリットもありますが、ビジネスチャンスが大きく売上アップも期待できます。そのため、トラブルを未然に防ぐためにも、越境ECを始める前から対応策を講じていきましょう。
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